日本繊維新聞【10-09-03】

【会員間でビジネス創造】

今、APC(日本アパレル・パターンメーカーズ・クラブ)の会員同士で、新たな仕事を見いだそうとする動きが活発になっている。事務局がアパレルCADを含めたシステムベンダーであるユカアンドアルファで、会員にはパターンメーカーやデザイナー、アパレルの企画担当者、生産管理のプロ、縫製工場の社長など650人に及んでいる。最近では、メンバー同士でOEM(相手先ブランド生産)の事業体を立ち上げるなど、新たなビジネスモデルとなるような動きも出てきている。

『APC』~顧客を囲い込め!~

 APCは、全国中小企業団体中央会「平成20年度組合等情報ネットワークシステム等開発事業」補助金によって設立。09年8月1日に登録を始めた。パターンメーカーを中心とした、ファッション業界で働くすべての人を応援することを目的に発足した。主な活動は、Web上でソーシャルネットワークサービス「APC-NET」を立ち上げ、人と人、人と企業のつながりを促進・サポートすること。09年11月8日に一般社団法人化し、ユカアンドアルファの林田勲会長が理事長となった。

『狙い』

 ユカアンドアルファの国内のユーザー1500社・海外1300社があるが、ファッション業界が変ぼうし、ソフトだけの販売に先行き不透明感があり、変革に合わせたシステムの提供が不可避となっていた。「人と仕組みの適切な融合をトータルでサポートする。全社の企業ポリシーとして推し進める。その1つがAPCで、まずネットワークを立ち上げた」(林田理事長)。事業そのものは、09年8月末のアパレルソリューションフェアからスタート。国内の製造が海外に流出してパターンメーカーが厳しい局面に向かっており、何か助けられることはないか-を検討。ユカアンドアルファは、「パターンメーカーに助けられて大きくなってきた。ネットワークを立ち上げて応援したい」という思いもあった。現在、会員は海外の技術者を含めて650人になっている。構成比はパターンメーカー39%、デザイナー27%、工場23%、その他11%と様々な人が登録している。最近では、アパレルメーカーの担当者も会員となってきている。あくまでも中小が主体だが…。OEMを行いながら自社ブランドを始めている会社が、ショップに商品を卸す。そういう仕事を始めたので店に見に来てほしい-など、「APC-NET」がインフォメーションの場としても使われている。

『お仕事掲示板』

 APCの会員の入会や活用の仕方が変わってきている。集まりの場としてのAPCの評価が高まり「すそ野も広がってきている」。これまでは、年に4、5回のオフ会(懇親会、情報交換会)の開催とAPC会員主催のアパレルの海外事情セミナーなどセミナー開催が主体だった。
 当初、機能を発揮できなかった“お仕事掲示板”が注目されている。前項のOEMの会員が、「今、パンツを30枚縫ってもらえる工場はありますか。納期は○○日」「外注パターンメーカーを探しています」-で、この時期に縫ってもらえる工場を求めるなど人探し、仕事探しをしている。また、「この素材の縫い方を教えてほしい」など日々の仕事の延長の内容が多い。
 林田理事長は、重要なのは事務局が基盤だけを準備すること。その中で
自発的にコミュニティーという形で発生していくのが、人とのつながりを促進するWebサイトのSNS(ソーシャル・ネットワーキングサイト)と強調する。ファッション系専門のSNSはほかになかったこともあって、「会員間の横のつながりをつくり、新しいビジネスモデルにチャレンジする。そういうことができたので意味のあるネットになっている。SOHOのパターンメーカーに、このネットワークを利用して厳しい状況を打破することを願っている」と強調。「目的は変わっていないが、会員間でコミュニケートしてもらって、厳しい環境下で少しでも仕事が増えるチャンスが出てくれば…。協力関係のある中で、新しいビジネスができればいい」というのが偽らざる考えだ。
 APCの1つの動きとして、例えば縫製工場の端境期対応としてある商品を作ろうとする。会員の中には生地メーカーやデザイナー・パタンナー、生産管理のプロや縫製工場の社長など“ものづくりのプロ”やアパレルなどの企画担当者がおり、1つのプロジェクトを作ることによって、適品を適時に供給できる体制の整備ができるのである。実際に、具体的な商品を作るケースも出てきている。
 会員からは、次のような意見が出ている。「これまで、同業他社(コンペチター)と情報交換することさえもままならない閉鎖的な業界だった。APCを通じて、まずはSNS内で会話し、オフ会など、大勢集まる場所で対話を深め、さらに直接1人1人にお会いし、情報交換を行うことができた」「それにより、今後は分業、細分化された業界を、少しでも1つに集約することが、生き残っていく術だとの答えを導き出すことができた」「初期段階として、同業他社とお互いの強み・弱みを協業することによって、今まで手をこまねいていた新しい市場を開拓したい」。

【APCプランニングサービスも提供】

『クラウド型』

 会員に限定してだが、APCが著作権を保有するソフトウェアをAPCで占有・管理するAPC-NETサーバー上で稼動させ、インターネット経由で利用できるクラウド側サービスアプリケーションである「APCプランニングサービス」を提供することにした。
 このほど開かれたアパレルソリューションフェアで公表されたもので、ログイン画面から、会員がデータ管理システムを使えるようにしたもの。APCの会員なら誰でもサービスを受けられる。料金は無料。ただし、利用制限条件があり、品番のデータ件数は、1IDに対し最大50件とする。そのデータはAPC-NETサーバーで保管する。イメージはU2などでビジュアル的に管理して、そこにデータをダウンロードし、ネットにつながる環境であれば、どこからでも引き出せる仕組みである。その発展系として、PDMシステムであるアルファユニファイやU2のデータ管理システムがあり、バージョンアップを望む場合は、ユカアンドアルファ製のシステムやソフトが提案される。
 これからだが、APCはサービスであり、それを媒体にしてどのようなサービスを繰り広げていくかである。事務局では、「このAPCが財産になる。このネットに入って、皆がハッピーになればいい。会員になって元気になり、持てる技術を使い、皆のモチベーションが上がるようにビジネスを発展させていけば、会員にいろいろとチャンスは生まれてくる」(中村恵子理事)と強調する。

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